運輸・物流業のBCPでは、拠点が使えても道路や燃料が止まれば事業を継続できません。逆に、被災していない車両と乗務員がいても、配車システムや荷主情報が使えなければ動けません。人、車両、拠点、情報、燃料、委託先を組み替える判断を計画にします。
運行中と拠点内を分ける
発災時に車両がどこにいるかを確認し、走行継続、待機、帰庫、代替拠点への移動を判断する連絡方法を決めます。乗務員が自己判断だけで危険な道路へ進まないよう、情報源と指示系統を明確にします。
倉庫や営業所では、従業員とドライバーの安全、荷崩れ、停電、シャッター、荷役設備、危険物、冷蔵・冷凍などを確認します。運行側と倉庫側で別の計画を作る場合も、荷物の引き渡しと情報更新を接続します。
優先する荷物と顧客連絡
すべての配送を同じ優先度で扱えない場合、生命・生活への影響、契約、品質保持、納期、代替手段から優先順位を決めます。個別荷主の要望だけで車両を割り当てず、経営判断の基準を用意します。
遅延連絡には、荷物の所在、品質への影響、再開見込み、代替案、次の更新時刻を含めます。正確な情報がない段階では推測を断定せず、確認中の範囲を伝えます。
車両・燃料・整備
車両一覧には所在地、用途、積載条件、乗務可能者、整備状況をひも付けます。燃料の確保では、自社備蓄だけでなく給油契約、停電時の供給、緊急車両等との優先関係を確認します。危険物の貯蔵・取扱いは数量と設備条件に応じて所轄消防の確認が必要です。
代替車両を借りる場合の保険、運転資格、荷役機器、車載端末も確認します。車両だけ確保できても乗務員と配車情報がそろわない状態を避けます。
配車システムが止まった場合
紙や表計算を代替にするなら、最新の配送指示、住所、連絡先、荷物条件をどこから取得するかを決めます。復旧後の二重配車や誤配を防ぐため、手作業期間の正本と更新者を一人にまとめます。
訓練シナリオ
主要拠点が使えず、一部道路が通行できない想定で、車両と乗務員の所在確認、優先配送、代替拠点、荷主連絡を机上で行います。結果は配車手順、連絡網、燃料契約、委託先協定へ戻します。
事業継続力診断で物流の依存関係を確認できます。この記事の執筆・監修は丸岡 峻です。元京都市消防局13年・現役防災士(日本防災士機構認定)・消防設備士・危険物取扱者。
乗務員の安否と運行指示
安否確認と運行指示を同じ連絡で済ませないようにします。最初に本人・同乗者・周囲の安全と車両位置を確認し、その後に停車、待機、帰庫、代替拠点などの運行判断を伝えます。
運転中に長文メッセージへ回答させず、安全な場所で確認できる方法を定めます。通信が不安定な場合の定時連絡、未連絡者の確認、家族から会社への問い合わせ窓口も決めます。
車両位置を地図へ落とす
車両動態システムが使える場合も、通信停止や電源障害を想定します。最終位置、行先、積荷、乗務員、燃料、連絡状況を一覧化し、道路・気象・通行規制の一次情報と重ねます。
システムが止まった場合は、電話や無線で得た情報を一つの地図・表へ集約します。複数担当者が別々に配車しないよう、手作業期間の指揮者と正本を決めます。
荷物の品質と保管
冷蔵・冷凍、医薬品、危険物、時間指定、精密機器など、荷物ごとに停止時の影響が違います。運行継続が危険な場合は安全な待機場所を選び、荷主へ所在と品質影響を連絡します。
代替倉庫へ移す場合、受入能力、荷役機器、温度、警備、在庫システム、保険を確認します。場所だけを協定しても、荷物を引き渡す手順がなければ機能しません。
拠点が使えない場合
営業所や物流拠点の被害を、建物、電気、通信、荷役、燃料、車両、在庫、人員に分けて報告します。部分的に使える場合、立入区域、作業時間、責任者を決めます。
代替拠点では、鍵、端末、ラベル、伝票、通信、休憩、衛生を準備します。通常拠点からデータを取り出せない場合の配送指示と実績記録を訓練します。
委託運送会社との協定
協力会社の車両を使う場合、連絡窓口、対応可能な荷物、乗務資格、保険、運賃、実績報告を平時に確認します。災害時に相手も被災している可能性があるため、複数の代替を検討します。
委託先へ顧客情報や配送データを渡す際は、個人情報とセキュリティの取扱いを通常手順から省略しません。緊急対応後のデータ返却・削除も決めます。
燃料管理と危険物確認
自社給油設備や予備燃料がある場合、品名、最大数量、保管・使用場所、設備、届出を確認します。指定数量や少量危険物の判定は、法令アンカーと政令別表、所在地の所轄消防署の案内を用います。
災害前の臨時増量や別拠点からの集約で倍数が変わる可能性があります。BCP上の備蓄目標だけで決めず、購入前に安全と法令上の確認を行います。
物流BCP訓練の記録
訓練では、車両位置、道路情報、優先荷物、代替拠点、荷主連絡を一つの状況表へ集めます。途中で道路条件や乗務員不在を追加し、再配車の判断を確認します。
講評は、情報不足、判断遅延、システム、契約、人員に分類します。改善を配車マニュアル、委託契約、車両台帳、訓練へ反映し、次回に同じ弱点を再検証します。
事業継続力強化計画への反映
拠点のハザード、重要配送、人員、車両・設備、情報、資金、代替手段、平時の訓練を整理します。認定制度の申請要件と支援内容は、中小企業庁の最新一次情報を確認してください。
認定を取得して終わりにせず、車両更新、拠点移転、委託先変更、配車システム変更を計画の見直し条件にします。
乗務員への携帯版手順
長いBCPとは別に、安全確保、停車、現在地報告、運行指示の受け方、荷物異常、連絡不能時の行動を携帯版へまとめます。端末が使えない場合にも確認できる形を検討します。
携帯版は車両や事業所ごとの連絡先と一致させ、更新時に旧版を回収します。新人・委託乗務員にも説明し、点呼時や訓練で参照できるか確認してください。